で使われている

   「静的陽解法弾塑性有限要素法」って何?

  1. 「有限要素法」とは?

FEM(Finite Element Method)という呼び方でおなじみの計算手法です。
中でも「構造解析FEM」では、金属などに力を加えたときにどう変形するか、あるいは逆に、所定の形状まで変形させるのにどういう力が必要か、という問題を、材料特性や力学の原理に基づいて計算機で算出します。
工業製品の力学計算を行うには、材料力学で扱えるような梁や柱ではなく、数式では表せない複雑な形状を対象にしなくてはなりません。
有限要素法では、複雑な対象物を細かい単純な(すなわち数式化が可能な)形状(○角形、○面体といった「要素」)に分割して、無数の「要素」の集まりとして計算機で処理します。
こうすることによって、複雑な形状がどう変形するか、どう壊れるか、どうやったら作れるか、などを事前に予測できるのです。
このような用途に使える手法としては、他に有限差分法、境界要素法などがありますが、構造解析の分野ではほとんどの場合、有限要素法が使われます。

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  2. 「弾塑性」とは?

「弾性」変形のみを対象とした解析では、ごくわずかな変形やその範囲での強度や剛性を評価することしかできません。
それに対して「弾塑性」解析では、弾性限を超えてからの大変形が扱えるので、製品の塑性設計座屈を伴う強度予測ができます。もちろん、プレス、鍛造など塑性変形を活用した製造工程のシミュレーションも可能です。
また、塑性域だけでなく変形量はわずかながら弾性域の変形もきちんと考慮に入れることから、金属のせん断の際に重要となる静水圧応力が正しく予測できることも、TP-STRUCT の特色です。

  3. 「静的陽解法」とは?

材料の弾塑性変形はいわゆる「非線形現象」の一つです。
すなわち、計算して出てきた変形量(ひずみ)に応じて材料の変形しやすさが変化するので、計算開始時の前提が崩れてしまうのです。
このような「非線形現象」は、材料特性のみならず接触状況の変化や応力の評価でも生じます。
したがって、方程式を1回解いただけでは正解が求まらない難解な解析と言えます。
これを解決するための解法として、既にいくつかの手法が汎用ソフトウェアでも使われています。その中でTP-STRUCTでは「静的陽解法」と呼ばれる独自の手法を採用しています。

  3.1 「静的」

塑性加工を扱うソフトウェアの多くは「動的」解法を採用しています。
これは、「静的解析」では力の釣り合いを解くために莫大な量の計算を行わなくてはならないため、代わりに人為的に加速度を考慮した簡便な運動方程式を解いた方が便利だからです。
しかし、「動的」解法ではどうしても応力が振動してしまうなど、スプリングバックせん断現象を扱うには不向きな面があります。
一方、「静的」解法はこれまで計算時間が長いため実用性で劣るとされてきましたが、近年の計算機性能の進歩やTP-STRUCT独自の高速化の工夫により、一般的なPCでも十分実用的な工業製品の塑性加工座屈シミュレーションが可能になりました。

  3.2 「陽解法」

塑性加工以外の非線形構造解析分野では、「静的陰解法」が主流です。
「陰解法」というのは、上記非線形問題を「陰的」すなわち繰り返し収束計算で解くというものです。
この手法で解が求まれば問題はないですが、複雑な問題(接触がたくさん発生するなど)に対しては、しばしば計算が収束せず解が求まらないといったことが生じます。
対して、これまで理研や弊社では、繰り返し計算を実施しない「陽解法」でありながら、力の釣り合い方程式や材料の応力-ひずみ関係式を精度よく満足する手法を長年研究してきました。
これにより、大変形問題で収束が得られない悩みから解放されるのみならず、材料のせん断や固有値解析を応用した座屈分岐解析への適用が容易になりました。

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